不動産会社・住宅企業の集客ツールとして、依然として大きな存在感を持っている「チラシ宣伝」。しかし現在では、ポスティング・チラシで反響を出せる不動産会社とそうでない会社の差が開いているとも言われています。

不動産系のチラシの反響率に差を付けるのは、物件の内容だけではありません。マーケティングツールとして、ポスティング・チラシを使いこなせているか?消費者の嗜好を理解した上でチラシを作れているか?…ちょっとした「チラシのコツ」を知っているかどうかで、チラシの反響率は変わってくるのです。

今回はマンション販売や一戸建て分譲等、不動産関連のチラシで反響を出すコツを5つの側面から詳しく解説していきます。

「外観写真」でチラシ読者を引きつける

不動産チラシで反響を出すためにまず着目したいのが、物件の「外観写真」です。公益社団法人・全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)が行った消費者意識調査によると、消費者が「見たい・知りたい」と回答した情報種別の1位は「物件外観」となっています。30%近い消費者は、不動産チラシを眺める時にまず「外観写真」をチェックしているのです。

外観写真によるチラシの第一印象は、「チラシをさらにしっかりと読むかどうか」を決める大きな要因となります。まずは「外観写真・画像」の見直しをしてみましょう。

重要なのは「明るいイメージ」

不動産チラシの物件外観写真は、「とにかく外観が判別できれば良い」というものではありません。極端な言い方をすれば、チラシ読者が求めているのは「外観のデータ」ではなく「その物件で明るく快適に暮らせるイメージ」なのです。

「雰囲気が明るい」
「サッパリとしていて清潔そう」
「写真がスッキリしている」

このような「ポジティブなイメージ」を与えることで、不動産チラシへの反響は大きく変わってきます。このようなイメージ重視の撮影の場合、物件の「真正面からの撮影」「全体が絶対に写っていること」にこだわらなくてもOKです。

<<撮影ヒント例>>
・敢えて物件から離れて望遠で撮影し、周囲の緑の多さを強調する
・中心を少しずらして、空の広さを強調する
・電柱や駐車中の自転車等、障害物を避けられるアングルを大胆に選ぶ
・坂の上である・海が見えるといった特徴がある場合には、その見晴らしを取り入れる

「外観データを詳細に!」という思い込みを捨てて、「イメージの良い写真」を意識してみましょう。

晴天・午前中の撮影がベスト

物件の「明るさ」を強調してくれるのが、背景となる「青空」です。撮影は晴天時に行うのは必須条件。そして青空が映り込むことを意識します。また撮影時間は午前中(朝方)か夕方ギリギリが基本です。昼の日が高すぎる時間に入ると排気ガス等によって空気が濁り、画像の色味が悪くなります。

できるだけ順光で撮影する

空の青さ・建物の明るさを強調するには、カメラマンが太陽を背にした状態で撮影をするのがベストです。この状態を「順光」と言います。反対に物件側が太陽を背にする「逆光」の状態だと空が白っぽく写り、建物に影が落ちて暗い印象になります。

物件正面がどの方角を向いているかによっても、ベストな撮影時間は変わります。「夕焼け前のギリギリならば順光になる」という場合もありますので、しっかり下調べをしておきたいところです。

「キャッチコピー」は暮らす人を主役に

不動産チラシで「写真画像」の次に反響を左右する存在となっているのが、物件の魅力を示す「キャッチコピー」です。コピーというと「駅名」「価格」「間取り」といった物件データや物件特徴を表すものと思われがち。しかし同じようなデータや特徴でも、「読む人」を意識したキャッチコピーの作り方をするだけで、読者の反響は変わってきます。

ターゲットを絞り込んでみる

宣伝したい物件はどんな人に向いているのか?どんな人ならメリットを感じやすいのか?…不動産チラシのキャッチコピー作りでは、その点をできるだけ細かく絞り込んでみましょう。

「万人受け」をしようとすると、不動産チラシの印象は散漫になりがち。しかしキャッチコピーで「こんな人にオススメ!」と書かれていると、マッチするターゲット層からの反響率が高まります。

<<例>>
・大容量の収納がある → 片付け苦手なママも安心!
・書庫・書斎がある → 「趣味が読書」そんなご夫婦におすすめ
・1F・一戸建て → 子どもをのびのび育てたいパパとママへ
・分譲マンション → 毎月家賃を払うのはムダと思っていませんか? 等

年齢層・家族構成・ライフスタイル等の属性を考えながら、物件にマッチするターゲット層を絞り込んだコピーを作ってみましょう。

物件で暮らす様子を想像させる

物件そのものの特徴(メリット)を箇条書き等で連ねるだけでは、読者側はなかなか物件の魅力を直感的に判断できません。物件で暮らす「快適なイメージ(ベネフィット)」をハッキリと想像させるキャッチコピーを作ることで、読者は短時間でも物件に魅力を覚えるのです。特に高額物件の宣伝ほど「イメージの喚起」が重要となりますので、意識しておきましょう。

<<例>>
・リビングが広い → 家族全員がゆったり集えるリビングで、憩いの毎日を。
・商業施設が近い → 週末はモールで映画とショッピング!
・駅前にジムがある → 帰宅前には駅ジムで一汗流してスッキリ。
・坂の上の西向き物件 → あたたかい夕焼け色の街を見下ろす喜び 

「ターゲットを絞る」「暮らす様子を想像させる」という2点をクリアしたキャッチコピーを作るには、「物件を主役」にしないことが大切。主役・主語はあくまでも「読者(暮らす人)」であることに着目すると、反響の良いコピーが作りやすくなります。

「レイアウト」で高級感を出す

不動産宣伝を行う上で重要なポイントとなるのが「高級感」のイメージ付けです。

分譲マンションや一戸建ての販売で「高級感」が無視できないのはもちろんですが、賃貸物件の宣伝でも「品質の良さ」「ゆとりある雰囲気」等の強調は必要となります。いくら「お手頃な物件」を探している人でも、わざわざ「安っぽく見える物件」を欲しがる人はほとんどいないからです。

では、物件をハイランクに見せるにはどうしたら良いのか?--その方法の一つに、チラシの「レイアウト」があります。不動産チラシでは、画像や文章のレイアウトひとつでも読者の反響が変わってくるのです。

分譲チラシでは「画像」を大きく配置

分譲マンション・一戸建て等の単独物件型の宣伝チラシの場合、画像は大きく配置するのが理想的です。画像を大きく配置することでチラシに視覚的なインパクトが生まれるだけでなく、「物件が広々している・高級感がある」という印象づけに繋がります。

特に前述のとおり「外観写真」は読者のもっとも求める情報ですので、基本的には一番目立つ大きさで、なおかつ目立つ箇所に配置します。読者はチラシを「上から下」に向かって読みますので、外観写真を強くアピールしたい場合には「チラシ上部」の目立つ箇所に外観画像を配置した方が良いでしょう。

ただし、マンションの「窓からの景観」が非常に良い場合等は例外です。この場合にはリビングからの展望を最大限に画像でアピール。最後に読者がチェックする右下箇所等に外観写真を配置します。

なお、「画像が大きい方が良いから」といって、何枚もの画像をギュウギュウに詰め込むのはNG。拡大画像は1~2枚程度に留めて、スッキリとした印象にすることも大切です。

賃貸チラシでもできるだけ配置に余裕を

いくつもの物件を並列して紹介する「賃貸物件チラシ」の場合でも、あまり物件情報を多量に詰め込みすぎるのはおすすめできません。紹介する物件数を適度に絞り、間取り図がキチンと見える・外観画像が潰れずに見える程度の大きさをキープしましょう。

文章レイアウトでも「ゆとり」を

物件の魅力をアレもコレも紹介したい---と、チラシの中に情報を詰め込んでいませんか?チラシで高級感を出すためには、実は情報量は少ない方が良いんです。

【高級感を感じやすいレイアウト例】
・画像と文字の間に余白がある
・文字同士の間隔が適度に空いている
・行間が適度に開いている

 

文字をむやみに大きくするのは、強調すべきキャッチコピー等に留めましょう。情報量は必要分だけに削ぎ落とし、文字数を減らしてスッキリと見せます。

「専門用語」はできるだけ避ける

不動産チラシの反響を上げるために気をつけたいのが、物件説明文での「専門用語」の多用です。不動産業界には様々な業界用語・専門用語がありますよね。長年業界に居る方にとっては「普通の用語(共通用語)」と思われている言葉でも、初めて不動産情報に接するエンドユーザーにとっては「わからない言葉」…というケースは珍しくありません。

「わからない言葉」が多ければ多いほど、チラシの読者は企業に対して不安を覚えます。「この企業は不親切だ」「信頼できない」と感じられたら、来店・購買といったアクションは望めません。特に女性や高齢者の消費者の場合、専門用語や業界用語に対する拒否反応は強い傾向です。はじめて不動産に興味を持った読者でも不安を感じないようなチラシ作りを心がけましょう。

サブコピーで用語を説明する

例えば「オーディオバス」の場合、「埋込式のオーディオ機器で、お風呂で好きな音楽を。」というサブコピーがあれば、読者は「お風呂で音楽が聞ける装置なのだ」という理解をすることができます。消費者の馴染みの無い用語・一般知名度が低い用語をどうしても使わなければならない場合には、このような説明をコピーで行います。

カタカナ用語は漢字も併記する

英語から生まれたカタカナの専門用語は、特に内容が想像しにくいため使用を避けたいところ。どうしても使いたい!という場合には、ある程度の想像が付くように「漢字表記」も併記した方が良いでしょう。

「イニシャルコスト」と書かれているよりは、「初期費用」と書いてある方が概要はつかみやすいですよね。また「ユーティリティ」だけではわからない読者でも、「ユーティリティ(家事室)」と書いてあれば内容を把握しやすくなります。

スタッフの「顔写真」を載せる

いくらチラシに掲載されている商材が魅力的に見えても、読者が企業を信頼できなければ「来店」「問い合わせ」といったアクションにはなかなか結びつきません。特に不動産は、分譲物件であれ賃貸物件であれ、消費者にとっては「高額な買い物」です。ですから消費者は「とにかく信頼できる相手」を望んでいます。

「この不動産屋は大丈夫なのか?信頼できるのか?」–消費者側のこの「不安」をクリアすることが、不動産チラシの反響を上げる上で忘れてはいけないポイントとなるのです。では、名前の知られていない中小規模の不動産企業が「チラシだけ」で信頼を勝ち得るためにはどうすべきなのか?そのひとつの手としては、「顔写真の掲載」が挙げられます。

「笑顔」で緊張がほどける

人間は「顔が見えないメッセージ」に対し、実際よりも大きな不信や不安を持つ心理傾向を持っています。ところがCMやチラシ等に正面を向いた「人間の顔」が見えるだけで、緊張感が大きくほどけ、相手に対する警戒心がゆるむのです。

特に「笑顔」の写真ではリラックス効果が倍増。消費者は緊張をほどき、メッセージを聞き取ろうとする姿勢に入りやすくなります。「人の顔」をチラシに掲載するだけで、好意的な反響を得やすくなるというわけですね。

経営者・担当者ならさらに有効

企業の経営者や物件担当者等の顔写真が掲載されていると、消費者はさらに企業への信頼度を高めます。「顔を出しているのだから、悪徳なことはしないだろう」…顔を隠すという「匿名性」の壁が無くなったことで、無意識のうちに「安心できる・信頼できる」という印象が強くなるのです。

消費者アンケート調査では、チラシやネット上のサービスについて「顔出ししている相手・企業に信頼感が上がる」と回答した人は実に82%にも上っています。まだ実績が浅い企業や、知名度が低い不動産会社こそ、「顔写真」というツールを駆使した方が良いと言えるでしょう。

おわりに

不動産関連企業がポスティング・チラシで反響を出すためのコツはいかがでしたか?外観写真、レイアウト、言葉の選び方…ほんの少しの「違い」が、チラシ紙面の印象を変えていきます。

エンドユーザーはこのような「ちょっとしたチラシの雰囲気」の違いについて、販売側が思っているよりもずっと敏感です。消費者の心理をきちんと踏まえてチラシを作ってゆけば、「反響」という数字になってあらわれてきます。細かな部分にも手を抜かず、消費者の心に飛びこむチラシを作っていきましょう。